八尾カタクリの森
早春にだけ咲く花・早春にだけ舞う蝶
角間匡之

春のはかない命(Spring ephemeral)
雪解けとともに芽を出し、花を咲かせ、新緑の頃に地上から姿を消してしまう草花を春植物といいます。
早春の短い間しか姿を見せないので、「春のはかない命 スプリング・エフェメラル」とも呼ばれます。
里山の林床を赤紫色の可憐な花で彩るカタクリは、代表的な春植物です。
樹木が葉を広げ、林床の光をさえぎる頃には、栄養を蓄え実を結んでしまいます。
春植物は、雪が解けたばかりの里山で、まるで花粉を運んでくれる虫たちに自分の存在をアピールするかのように、
鮮やかで目立つ花を咲かせます。
八尾町角間地区には、カタクリが群生する貴重な森が今も残っています。
このカタクリの森では、イチリンソウ、キクザキイチゲ、ヤマエンゴサクといった春植物の姿も見ることができます。
春のはかない命たちは、短い夏にだけ姿を見せる高山植物のような、可憐で清楚な美しさを感じさせてくれます。

早春の時期には春植物以外にも、ショウジョウバカマやシュンラン、ユキツバキやキブシなど、春を告げる花が見られます。
カタクリの姿が見えなくなると、林床ではチゴユリやフタリシズカが咲き始めます。

春の女神
ギフチョウ
ギフチョウはアゲハチョウの仲間で、世界で日本の本州にしか棲んでいない日本固有の蝶です。
幼虫は、徳川家の家紋でおなじみのフタバアオイやカンアオイしか食べません。ですから、カンアオイが生える里山にだけ生息する蝶なのです。
ギフチョウは、蛹のまま越冬し、春の雪解けを待って羽化し、早春の里山でカタクリやスミレなどの蜜を吸います。
成虫の寿命は一ヶ月ほどで、雌は交尾した後、カンアオイの若葉の裏に産卵します。
ギフチョウはその美しい姿から「春を告げる女神」と呼ばれます。受粉の手助けを待っている春植物にとっても、まさに女神だといえます。
八尾カタクリの森は、カタクリやギフチョウが支えあって暮す素晴らしい自然と出会える里山なのです。
